About Hush-Hush
Hush-Hush【形容詞】 ごく内々の、極秘の
元ネタはジェイムズ・エルロイの小説、LA三部作に登場するゴシップ雑誌──諧謔的な文体でLAの醜聞をすっぱ抜く大衆誌。
本ブログを開設した時期も動機も、今となっては忘却の彼方にある。ブログのドメインを取得した当時の僕が何を考えていたにせよ、いくぶん時間が経った今もなお、このブログは存在している。惰性体として続いていく媒体──映画評論家 蓮實重彦は著書『見るレッスン』のなかで、映画という媒体《メディア》の本質について、惰性として続いていく媒体であり、それゆえに映画は今後も惰性的に続いていくだろうと記している。
明確な目的を持たず、崇高な使命を掲げず、思いの丈を綴るテキスト媒体。それは自己の切り売りかもしれないし、ささやかなカミングアウトなのかもしれないが、書いている当人にとっては心地が良い。はてな界隈をバックグラウンドに生まれた稀代の小説家 伊藤計劃は『虐殺器官』のなかで、世界的に見てブログのアクティブユーザーがもっとも多いのは日本だと、主人公クラヴィス・シェパードを通してメタ的に言及している。そんな伊藤もまた、日々の徒然なる事がらを、書物や映画を起点とした思弁を、自らのブログで書き続けていた。
個人日記の延長から評論の真似事、さらには小説の掲載まで、いかなる内容(コンテンツ)も許容する媒体──ブログ。それは、テキストを介した他者/自己とのコミュニケーションであり、自己の経験を言葉というプリズムを通して捉えなおす運動である。人は言葉と出会った時から思想的である。そう言ったのは寺山修司だったか。
自分の思ったことを、自分の言葉で、無遠慮に書き殴る。そこには目的も使命もなく、ただ言葉があるだけだ。子どもの頃、公園や山中の秘所に設けた秘密基地のような、言論空間と呼ぶにはあまりにも怠惰で閉鎖的な、文章群のインスタレーション。
本ブログのドメインを取得し、エルロイの小説から「Hush-Hush」の名を拝借した過去の僕は、おそらくそういうことを考えていたんだろう。真相は分からない。
ここだけの話。ハッシュ、ハッシュ(Hush Hush)
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